COVID-19の流行にともなって、血中酸素飽和度(SpO2)という単語をよく聞くようになったのではないでしょうか。また、Apple Watch Series 6がSpO2計測(血中酸素ウェルネス)に対応したことでも話題になっています。その他にもSpO2計測に対応したスマートデバイスがいくつか発売されており、比較的手軽にデータを知ることができるようになっています。
スマートウォッチ型デバイスのSpO2計測の特徴を知るために、病院などで利用される指先型デバイス(パルスオキシメーター)との比較をしてみました。
血中酸素飽和度について
血中酸素飽和度(SpO2)とは、血中のヘモグロビンの何%に酸素が結合しているかを示す値です。この値を見ることで肺から全身にどれくらい酸素を供給できているかを評価することができます。平常値は96~99%程度で、90%未満だと呼吸不全の状態であると言えます。
SpO2は、一般的にはパルスオキシメーターを用いて指先で経皮的に計測されます。パルスオキシメーターは赤い光を出しているイメージだと思いますが、SpO2計測では「赤色光」と「赤外光」の2つの光が使われます(赤外光は目に見えないため赤い光だけが見えます)。この2つの光は、ヘモグロビンに酸素が結合しているかで、吸収度合いが異なります。赤色は酸素の多いヘモグロビンにあまり吸収されません(だから血液は赤く見える)。この2つの光の吸収度合いをごにょごにょと計算することでSpO2を計測しているわけです。
なので、SpO2計測をうたっているデバイスで赤く光ってないのは要注意です。また、仕様に赤外光LEDがないものも要注意です。ちなみに赤外光はデジカメやスマホカメラを通して見ると可視化できます。
「SpO2を読む話」(コニカミノルタセンシング 2009)に詳しい解説がありますので参考にしてください。
対象デバイス
以下の3つのデバイスをSpO2計測を行いました。
O2Ringは、FDA(アメリカ食品医薬品局)の医療機器認証を取得したパルスオキシメーターです。4秒ごとにSpO2の値を計測できます。計測データの中からHonorで手動計測を行った時間(1分間)の平均値を算出しました。
HONOR Band 5は、Huaweiから発売されている低価格なアクティビティトラッカーです。手動操作により1分間でSpO2を計測できます。
Apple Watchは、Series 6からSpO2計測に対応しました。血中ウェルネスアプリを利用して15秒でSpO2を計測できます。
すべてのデバイスを右手に装着し、安静状態で同時にSpO2計測を行いました。はじめに5回ほど練習測定を行ったあと、2分に1回のペースで計10回の計測しました。
計測結果
Honor Band 5は他のデバイスよりも計測値が高くなる傾向がありました。1~2%の違いではありますが、SpO2の値でこの差は大きいと言えます。メーカーからも医療機器ではない旨の注意書きがありますが、このデバイスでの計測結果は高めかな、低めかなを判断する程度でしか使えないように思います。
Apple Watch 6は値がばらつく傾向が認められますが、平均値はパルスオキシメーターO2Ringと近い値となりました。Honorとは10倍以上のお値段の差ですから、この結果は当然かもしれませんが、15秒でそこそこの精度のデータが得られるのは素敵です。また、短時間で計測できることを考えると何度か測ることで、より正解に近い値を知ることができそうです。ただし、Appleは「医療用ではなく、一般的なフィットネスとウェルネスの目的でのみ設計されている」と言っていますので、利用には注意が必要です。