TARO.fit

システム概要

TARO.fitシステムは、トレーニング・セッション後にアスリートが入力したトレーニング時間を基に、Fitbitサーバーからトレーニング中の毎分の脈拍、歩数データを自動的に取得します。同時に、安静時脈拍、睡眠時間などの日々のリカバリー情報も記録します。

収集データはグラフによりその動態を可視化できます。また、負荷構成の評価(MonotonyやStrainなど)、Banisterモデルによるトレーニング効果予測といった分析ができます。トレーニングデータや分析結果はアスリートが指定したコーチと共有することができます。

fig1_taro.fit

対応データ

スマホアプリからの手入力項目とFitbitからの自動インポート項目があります。

データ項目備考
トレーニング時間手動(入力必須)
セッションRPE手動(入力必須)
体調手動
コメント手動
脈拍(トレーニング時)毎分
歩数(トレーニング時)毎分
TRIMP(Banister)毎分
パフォーマンス手動:競技会、コントロールテスト
形態・身体組成手動:周囲径、体重&体脂肪
安静時脈拍(起床時)Fibit算出値と独自アルゴリズム値
就寝・起床時刻 
睡眠の質深睡眠時間、睡眠効率

アプリ画面

アスリート用

fig2_taro.fit

コーチ用

fig3_taro.fit

トレーニング評価項目

トレーニング負荷の定量化

セッションRPE (sRPE)(Fosterら 2001)

$$ {sRPE} = {D} \times {RPE [CR10]}$$

${D}$:トレーニング時間 [分]
${RPE [CR10]}$:10段階で示した主観的運動強度

Banister’s TRIMP(Banister & Calvert 1980)

$$ {TRIMP} = {D} \times C_{1} \times \Delta HR \times e^{C_{2} \times \Delta HR}$$

${D}$:トレーニング時間 [分]
$\Delta HR$:$\frac {{運動中の平均心拍数} – {安静時心拍数} } {{最大心拍数} – {安静時心拍数}}$
$C_{1}$:男性=0.64、女性=0.86
$C_{2}$:男性=1.92、女性=1.67

TARO.fitでは、手動入力によるトレーニング時間、主観強度からsRPE、Fitbit計測値によるトレーニング中、安静時心拍数からTRIMPを算出しています。

トレーニング負荷構成

トレーニングが適切な負荷で実施されているか、負荷と休息のバランスを、「単調さ(Monotony)」と「追込み度合い(Strain)」の観点から評価。また、負荷の急激な変化の有無から障害発生リスク(ACWR)を評価。

Monotony&Strain(Foster&Lehmann 1996、Foster 1998)

$${Monotony} = \frac {トレーニング負荷の週平均} {トレーニング負荷の週標準偏差}$$
$$ {Strain} = {トレーニング負荷の週合計} \times {Monotony} $$

Acute:Chronic Workload Ratio (ACWR) (Hulinら 2016)

$$ {ACWR} = \frac {直近7日間の平均トレーニング負荷} {前週から過去28日間の平均トレーニング負荷} $$

TARO.fitでは、sRPE、TRIMPそれぞれから各項目の値を算出し、参照可能となっています。

トレーニング効果推定

トレーニングで生じた体力の向上(Fitness)と疲労の蓄積(Fatigue)の合計をトレーニング効果=パフォーマンスと想定したモデルを利用し、日々のトレーニング負荷の畳込み演算により効果を推定。

Fitness-Fatigueモデル (Banisterモデル)(Banisterら 1975)

$$ p_{t} = p_0 + k_1 \sum_{i=1}^{t-1} w^i e^{- \frac {n-i} {r1}} – k_2 \sum_{i=1}^{t-1} w^i e^{- \frac {n-i} {r2}} $$

${p_t}$:時点tにおけるパフォーマンス
${p_0}$:パフォーマンス初期値
${w}$:トレーニング負荷   ※モデルへの入力値
${i}$:トレーニングセッション番号
$k_1、k_2$:重み係数 → パフォーマンス種別、個人差を補正
$r1、r2$:時間による減衰率 → 体力より疲労消失が速い($r1\gt r2$)

TARO.fitでは初期設定値としてオリジナル論文の係数を利用(変更可)
$k_1 = 1.0$、$k_2 = 1.9$、$r1=49.5$、$r2 = 11$

文献

  • 伊藤&志賀 (2019) アクティビティートラッカーを活用したトレーニング評価システム,日本コーチング学会 第30回大会,神奈川

セッションRPE、TRIMP

  • Foster et al. (2001) A new approach to monitoring exercise training. J Strength Cond Res 15: 109-15
  • Banister & Calvert (1980) Planning for future performance: implications for long term training. Can J Appl Sport Sci 5 : 170-6

負荷構成の評価(Monotony、Strain、ACWR)

  • Foster & Lehmann (1996) Overtraining Syndrome. In: Guten GN (ed) Running Injuries. W.B. Saunders: 173-88
  • Foster (1998) Monitoring training in athletes with reference to overtraining syndrome. Med Sci Sports Exerc(30): 1164–8
  • Hulin et al. (2016) The acute:chronic workload ratio predicts injury: high chronic workload may decrease injury risk in elite rugby league players. Br  J  Sports  Med 50: 231–6

Banisterモデル

  • Banister et al. (1975) A system model of training for athletic performance. Aust J of Sports Med 7: 170-176

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