スマートデバイスで摂取エネルギーの自動計測

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アスリートの体重管理に限らず、ダイエットなどで体重を減らしたい時には、消費エネルギーだけでなく、摂取エネルギーもしっかりと把握することが大切です。摂取エネルギーの記録では、食べたもののログ(myFitnesspalFoodLogなど)を残すのが一般的ですが、最近はスマホで写真を撮るだけでAIが食事内容、カロリー量を自動判定できるサービス(Foodvisorカロミルなど)もあります。いずれにしても何かしら記録する作業が必要なので手間もかかり、忘れることもあります。付けてるだけで、勝手に摂取カロリーを記録してくれるのが理想です。

そんな理想を叶えてくれるかもしれない(かもしれないの理由は最後に)のがHEALBEのGoBe3です。摂取エネルギー計測に対応した腕時計型のアクティビティートラッカーです。

HEALBE GoBe3
出典:https://healbe.com

製品インプレッション

本体

GoBe3のサイズはちょっとゴツめの腕時計サイズです。これでも初期バージョンに比べればだいぶ小さくなり、日常的に着けてもいいかなと思えるレベルになりました。また、ちゃんとしたディスプレーが付いたので時計としても利用できるようになりました(GoBe1&2はドット文字盤)。
ディスプレイはタッチ操作となっていますが基本的には表示内容の切り替えだけで、機能設定などはありません。長押しして操作モードにして切替といった感じで操作性はあまりよくない印象です。

GoBe2_vs_3
GoBe3(左)とGoBe1(右)のサイズ比較

計測項目

摂取エネルギーのほかに活動量、生体情報の計測に対応しています。

  • 活動量:歩数、移動距離、睡眠時間(就寝、起床)
  • 生体情報:脈拍(PPG)、ストレスレベル(脈拍数、活動レベルから判定する独自指標)
  • 代謝:摂取エネルギー、水分レベル(相対評価)、摂取栄養素(β版)

バッテリー

バッテリーのカタログスペックは32時間で、実際もその程度です。ただ、睡眠のトラッキングをすると24時間つけることになりますが、次の日の中途半端な時間(昼過ぎとか)にバッテリーがなくなります。32時間という微妙な稼働時間と生活のリズムとがうまく合わず、充電のタイミングが難しいという印象でした。
充電は専用コネクタケーブルが必要ですが、時間はそれほどかからない印象でした。なので、朝起きてシャワー浴びる間に充電するような使い方になるかと思います。

データ管理

専用アプリにデータを同期して計測結果をグラフなどで確認できます。また、Apple Healthにも対応しており、摂取エネルギーなどの書き出し、体重データの読み込みが可能です。アプリの機能としてはデータが表示されるのみで、データの解説や行動変容のためのアドバイスなどは表示されません。また、アプリ上で確認できるデータが過去7日間のみとなっているため、計測データから変化の傾向(トレンド)を把握することもできません。すべての計測結果を確認するにはWebポータルにアクセスする必要があります。が、FAQやマニュアルにはWebポータルで見なさいと書いてあるもののリンクURLが間違っており、見つけるまでが一苦労でした(HEALE Web  Portal)。

計測データのエクスポート機能はアプリ、Webポータルともにありません。デバイスにアクセスするためのスマホアプリ用のDeveloper APIはありますが、クラウドサーバーから計測結果を取得するようなWeb APIは公開されていないようです。ただ、Webポータルではデータ取得にAPIを使っていますので、データを一括で取得する手段はあります(今回の検証データにはWebポータルのJSONデータを利用しました)。

摂取エネルギー計測の検証

本題の計測結果の前にGoBeの計測方法を紹介しておきます。GoBeには生体インピーダンスセンサー(体脂肪計と同じもの)が搭載されおり、体内の電気抵抗の測定から摂取エネルギーを推定しているそうです。測定の方法は、食べ物を消化する際のグルコース吸収と関係のある体内の水分量の変化を2波長のインピーダンスセンサーで捉えるというものです(Flow Technology)。食べ物に含まれる栄養素によってグルコース吸収のスピードには違いがあり、グルコース吸収を反映している水分量の変化を測定することで、エネルギー量、栄養素を推定しているそうです。詳細はこちらからご確認ください。

計測方法

日中GoBe3を装着し35日間の計測を実施しました。何かを食べた後、最低でも3時間は装着し続けました(寝る前に食べてしまったときは着けたまま就寝)。
食べたものは間食も含めすべて日誌に記録し、カロリー表示があるものはその値、ないものは食品成分データベースの値を採用しました。
計測期間が長いと結果が正確になるとのアプリからアドバイスがありましたので、測定が安定するまでの期間を考慮して、計測開始から7日間のデータを除外し、28日間のデータを検証対象としました。

カタログスペックでは摂取エネルギー計測の精度は89%とうたわれています。検証論文を確認しましたが、精度の評価指標がいまいち不明確(GoBeとリファレンスメソッドの相関係数が0.88という記述はあった)でしたので、今回は単純に2つの方法による計測結果の差を見ました。

計測結果

fig2
4週間分のGoBe3と日誌の結果比較

上の図は28日間のGoBe3と日誌(手動記録)による摂取エネルギー計測値です。ピンクの棒グラフはGoBe3と日誌の差を示しています。マイナスはGoBe3の値が日誌よりも小さいことを示しています。多くの日でGoBe3は過小評価となっていました。一日あたりの平均値だと日誌1929.9kcalに対して、GoBe3は1286.3kcalと、その差は-643.6kcalありました。1食分くらいの差です。全体の1/4は差が10%程度ではありましたが、ほとんど推定できない日(500kcal未満)もちらほらありました。絶対値として結果に差があったとしても、増減の傾向(たくさん食べたときは高く、食べなかったときは低く)が一致していればモニタリング指標として利用できます。下の図は対応関係を確認するために、GoBe3を縦軸、日誌を横軸に散布図をプロットしたものです。残念ながら意味のあるレベルでの相関関係は認められませんでした。

fig3
GoBe3と日誌による摂取エネルギー計測値の対応関係

今回の検証でリファレンスにした食事日誌のデータは、重量などを測定し算出したものではなく食品成分データベースからの推定値であるため、厳密に正解データとは言えません。ですが、4週間のGoBe3の結果では明らかに計測に失敗している場合もあり、また、全体的に1食分程度少なめに計測される傾向がありました。全自動計測はとても魅力的ですが、計測結果の利用にはちょっと注意が必要なようです。

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