トレーニングのリカバリーに睡眠は重要です。最近のアクティビティトラッカーはどれも詳細な睡眠情報を計測でき、コンディション管理に有効活用できます。アクティビティトラッカーには数千円のものも多く発売されています。これらの製品と1万円を超える製品との違いはないのか?検証してみました。
対象製品はHonor Band 5(Huawei)で、Amazonでは4,500円程度で販売されています。この価格でSpO2測定もできてしまうなかなか優れものです。比較対象は、ちょっと古めですが、Fitbit Alta HR(2017年発売)です。2つのデバイスを21日間装着して、それぞれの睡眠計測データを比較しました。
図1は睡眠の総量に関する計測値のデバイス間の関係を示しています。ベッドにいた時間、実際に眠っていた睡眠時間ともに強い相関が認められます。つまり、どちらのデバイスでも長く眠ったときは長く、短い睡眠のときは短く計測されていたことになります。次に、図2は睡眠の質を表す睡眠ステージの計測値のデバイス間の関係を示しています。図1の総量指標にくらべ、デバイス間の相関関係は低くなっています。つまり、睡眠ステージの計測結果はデバイス間で違いが大きそうだ(長い、短いが異なる)ということになります。
各睡眠計測データの21日分の平均値を見てみると、レム睡眠と深い睡眠の計測結果がHonor Band 5とFitbit Alta HRとで大きく異なっていました(表1)。レム睡眠はFitbitの方が長く、深い睡眠はHonorの方が長くなるという特徴がありました。これらの違いは統計的にも意味のあるものでした。
Honor Band 5 | Fitbit Alta HR | 有意差 | |
---|---|---|---|
レム睡眠 | 81.2±35.6 | 106.7±29.3 | p<1% |
浅い睡眠 | 225.7±63.9 | 212.7±61.8 | n.s. |
深い睡眠 | 106.0±42.3 | 54.0±24.6 | p<1% |
総睡眠時間 | 413.0±100.7 | 373.4±93.9 | n.s. |
ベッドに いた時間 | 537.4±101.6 | 425.3±114.9 | p<1% |
覚醒時間 | 39±55.0 | 52±23.3 | n.s. |
睡眠スコア | 74.7±5.3 | 82.5±4.0 | - |
デバイス間の違いを分かりやすくするために、各項目の計測値を比率で表しました(図3)。1より小さければFibitの方が、1より大きければHonorの方が計測値が大きくなることを意味します。目立った違いとして、深い睡眠の計測値がHonorはFitbitの約2倍長くなっていることが分かります。今回の測定では脳波測定から正確な睡眠ステージを判定するような正解データがないので、どちらがより正確なのかを判断することはできません。あくまで、デバイスにより結果に違いがあることを示しているだけです。このことを前提にしますが、印象としてはHonorの深睡眠の結果はちょっと長すぎるような気がしています。
今回は格安アクティビティトラッカーHonor Band 5の睡眠計測結果について紹介しました。トータルの睡眠時間についてはお高めのアクティビティトラッカーと同じような結果でしたが、睡眠の質を示す睡眠ステージの結果(特に深睡眠)には違いがありました。HonorとFitbitでは違いがありましたが、各デバイス内では結果に一貫性があるようです。どんな生体情報計測でも同じことですが、同じデバイスで継続的に計測し、相対的な変化の傾向を評価することが重要です(デバイスを混ぜるな危険)。結果を見る限り、格安のアクティビティトラッカーによる睡眠計測でもコンディション、リカバリー評価に利用できそうです。