映像による「パフォーマンス分析」

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現在のスポーツ(特に競技スポーツ)では映像によるパフォーマンス分析は欠かせないツールと言えます。また、スポーツ・トレーニング実行の前提となるその競技のパフォーマンス構造の理解において、パフォーマンス分析は重要な役割を持っていると言えます。
パフォーマンス分析は分析目的・対象により「ゲーム分析」、「レース分析」、「動作分析」などに分類できます。また、その方法としてセンサー、映像など様々なテクノロジーが使われますが、映像を利用する場合、「定性分析」と「定量分析」に分けることができます。

スポーツのパフォーマンス分析の分類

定性分析は観察者の経験をベースに見た目の印象からパフォーマンスを評価する方法です。競技現場でコーチが日々行っているのはこれです。この方法は即時性に優れると言えますが、正確で適切な評価をするには経験と知識が必要です。また、通常、コーチは特定のアスリートのパフォーマンス情報を時系列的に蓄積(経験)し、その過去の情報(流れ)をもとに相対的に評価を行っています。普段あまり見ていない、あるいは過去にいた、といったアスリート間の比較などの分析にはあまり向いているとは言えません。

一方、定量分析は数字による客観情報としてパフォーマンスを評価します。パフォーマンスが数値化されるので、全く異なる時間、場所で発揮された、別々のアスリートのパフォーマンスであっても理論的には比較・検討が可能です。また、分析方法や評価尺度の選定に知識は必要ですが、競技に関する専門知識がなくても分析を行うことができます。しかし、映像から定量データを抽出し、そのデータの処理(演算やグラフ化など)に時間がかかるため即時性には劣ります(ただし、AI技術の発展によりこの弱点は解消されつつあります。このあたりの話題はまたの機会に)。

どちらの方法が優れているわけではありません。それぞれの手法の利点と欠点を理解し、ケースバイケースで利用することが重要です。いずれの手法においてもテクノロジーを活用することで、過程を効率化し、より効果的な結果を得ることもできます。

今回は実践現場での利用を想定して、使えるスマホやタブレット用のパフォーマンス分析アプリを紹介したいと思います。

定性分析

定性分析は人の眼により現象を捉え(印象)、経験・知識に基づき評価する手法です。現象を捉える、評価した結果を人に伝える(コーチからアスリートへ)ところで、テクノロジーは威力を発揮します。スポーツ動作という現象を捉えるときにスマホで動画を撮影し見返すというのは当たり前のように使われるテクノロジーです。また、映像をコマ送りやスローモーションで再生したり、動画の各フレームを繋ぎ合わせて一連の動作を連続写真で見せたりすることもより確実に現象を捉えるために役立ちます。コーチが気づいた動作や戦術のコツやポイントなどをアスリートに伝えるときには言葉よりも画像に図形などのアノテーションを付けて視覚化したものを用いる方が効果的です。

映像提供 :公財)日本水泳連盟AS委員会
出典:「Total Football Analysis」- https://totalfootballanalysis.com/player-analysis/matteo-pessina-at-atalanta-scout-report-tacitcal-analysis-tactics

再生機能が豊富な動画プレーヤーアプリには以下のようなものがあります。

アプリ名 機能価格

ウゴトル
スポーツ向け再生機能が豊富な動画プレーヤー。コマ送り、2画面表示、重ね合わせ、遅延再生などができる。
無料版は遅延時間制限や広告表示ありなど制限あり。
無料
(サブスクあり)

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TouchTheVideo
ほぼすべての再生操作をタッチでできる動画プレーヤー。アノテーションスロー、拡大、反転、コマ送り&戻し、区間リピート、時間マーカーなど動画再生で考えられる機能は網羅。 320円
(Lite版あり)

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動画再生機能に加え、アノテーション付け機能を持ったアプリには以下のようなものがあります。

アプリ名 機能価格

Coach’s Eye
表示:2画面
アノテーション:描画、角度、タイマー、スポットライト
※角度、タイマー、スポットライトは追加購入が必要
その他:アノテーション録画、共有
610円
(iOS版)

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LessonPad
表示:拡大、2画面、重ね合わせ
アノテーション:描画
その他:カメラ機能
1960円

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WonderShot Lite
表示:拡大、4画面、重ね合わせ
アノテーション:描画、角度
その他:アノテーション録画、カメラ機能、簡易編集
※有料版の記述はあるがストアにはない
無料

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Darfish Express
表示:2画面、重ね合わせ
アノテーション:描画、角度、タイマー、距離
その他:myDartsifhサービスでの共有
750円

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連続写真を作成するアプリには以下のようなものがあります。

アプリ名 コメント価格

モーションショット
撮影した8秒の動画から4種類のエフェクトを付けた連続写真を作成。
2021年9月30日で配布終了予定
無料

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Clipstro
残像数、残像間隔、残像対象数を設定して連続写真を作成。Apple Watchからの遠隔操作に対応。490円

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定量分析

定量分析はテクノロジーを使うことで実現できる分析方法と言えます。映像による定量分析ではアスリートやボールなどの用具の位置情報(変位)を定量化する場合とプレーの内容や回数などを定量化する場合があります。前者は主に動作分析、レース分析で、後者はゲーム分析で用いられます。動作やレース分析では変位から速度や角度変化などのキネマティックな情報を解析し、ゲーム分析ではプレーに関する統計情報から戦術情報などを解析することになります。
従来、定量化の方法としては「人」が対象の場所を識別し手作業(クリックするなど)で座標を取得するのが一般的でした。最近のAI技術の発展によりコンピュータが自動的に対象を識別し座標化することも可能になってきました。

Preferred Networks「PitchBrain」 出典:https://www.preferred.jp/ja/projects/sports-analytics/、https://youtu.be/hs_v3dv6OUI(Youtube)

動画から手作業で定量化情報を取得できるアプリには以下のようなものがあります。

アプリ名 機能価格

Swim Coach Plus HD
2画面、重ね合わせ再生ができる動画プレーヤーアプリ。Analyseモードで区間距離、ストローク数を入力することで泳速度、ストローク長・頻度などを計算できる。解析結果のPDF出力も可。120円

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Playground Physics
初等教育向け物理の学習用アプリ。フレームごとに対象物をタップするだけで変位、速度などをとても簡単に算出できる。解析結果が動画に重ねて表示され見やすい。解析結果の動画出力もできる。 無料

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Vernier Video Physics
動画の各フレームで座標を取得して実座標の距離、速度などを算出できるアプリ。座標取得がタップ操作用に最適化されていて良い。自動トラッキング機能もある。
解析結果はグラフ表示でき動画出力も可。XML形式でのデータ保存のも対応(ただしVernierの他ソフト用のファイル形式のため変換が必要)。
610円

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NewtonDV
動画の各フレームで座標を取得して実座標の距離、速度などを算出できる物理計算用アプリ。一覧表、グラフ表示に合わせ、画像上でのベクトル表示、ストロボ写真作成などもできる。入力がややしづらい。 490円
(Win版あり)

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AI支援機能を持つ解析アプリには以下ようなものがあります。

アプリ名 機能価格

iAnalyze
機械学習アルゴリズムによる姿勢推定と重心やバーベル位置のトラッキングが可能。識別はとても速いが精度はあまりよくない。
2画面比較、重ね合わせ(要保存)表示にも対応。
120円

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Run-DIAS
姿勢推定AIにより関節位置、ピッチ、ストライドなどを自動解析。スマホで撮影した映像をクラウドサーバーに送信して解析結果を受け取る仕組み。老舗動作解析ソフトウェアFrame-DIASの宣伝用といった性格。 無料
※要アカウント

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ゲーム分析に利用するイベントタグ情報を入力できるアプリには以下のようなものがあります。

アプリ名 機能価格

Picco
イベント入力用ボタンを画面に表示し、実際のゲームを見ながらタグ情報を記録するアプリ。時間情報に合わせてプレー内容、プレー位置などを記録できる。各種スタッツをまとめたレポート作成も可。 無料

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MY TAGTIC
動画を撮影しながら簡単なタグ(イベント内容、対象選手、コメント)を付けられるアプリ。撮影済みの動画にも対応。付けたタグから必要なシーンを切り出して共有もできる。
Jリーグ公式スタッツを担当するデータスタジアムが提供。
無料
(サブスクあり)

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